昭和三年、信濃川上流の山間集落に小作人の倅として育った朝田竜吉は、十日町の高野家に丁稚奉公することになった十七歳の時だった気苦労の多い丁稚生活の中で、竜吉の安らぎは、高野家の一人娘で女学校三年の雪絵の美しい存在だったある日、雪絵は母が十三年前、番頭と駆落ちしたということを知った問いつめても黙っている父に業を煮やした雪絵は、衝動的に竜吉を土蔵に引き入れ激しいキスを交わした番頭の辰之助の進言で、雪絵は長岡の女学校に転校することになった雪絵は出発前に自分のすべてを竜吉に与えようとして二人は土蔵に入った、が、一足先に土蔵に入った竜吉は、中で雪絵の父と辰之助が男同志で抱き合っている姿を見た雪絵が入ろうとするのを止めた竜吉は、雪絵には口が裂けても、このことは言うまいと誓うのだった昭和五年、転校した雪絵は、情熱的な左翼シンパの国語教師・沖島雄介に急速に接近した校長に呼び出された父は、雪絵を十日町へ連れ帰った沖島は、結婚を申し込みに十日町まで来たが、父は即座に拒否した沖島と雪絵は駆落ちしたその二人の姿を遠くで見ていた竜吉は、雪絵との思い出の写真を信濃川に捨てた沖島と雪絵は刑事に捕わり、沖島は父のいる伊豆へ、雪絵は十日町へと強引に帰らせられた途中、再び逃げた雪絵は伊豆へ行った激情の中で抱き合う二人、雪絵は処女を捧げたしかし、雪絵は何故か、沖島から離れて行く自分を感じていた何事もなかったかのように十日町に帰って来た雪絵は、高野家が金融恐慌のため莫大な借金を背負っていることを知った夏祭りの夜、雪絵と竜吉は再会した「死にたい」雪絵が呟いた「お嬢さんが死ぬなら私も死にます……」雪絵の頬に涙が流れ、二人は信濃川に身を投げたが、幸か不幸か助けられた……雪絵の青春は終りかけていた塩沢の大きな買いつぎ店に政略結婚同様に嫁いだ彼女の花嫁行列を、じっと見送る一人の青年がいた単身満州へ渡ろうとする旅姿の竜吉だった